ニュージーランド7日目

ニュージーランド7

[さらば南島 そしてマタカナへ]

今日は昼過ぎのフライトでオークランドへ向かう。冷え込む朝となりクイーンズタウンから望むリマーカブルス山脈には昨日より雪がかかっていた。
まず、雨の中南島で1週間お世話になったTOYOTA RAV4にお別れした。
天候不良によりフライトの時間がおしたため想定していたよりクイーンズタウンとの別れをよりじっくり惜しむことができた。16時前に到着予定となった。
機内ではボーっとしているのに不思議と冴えがありこの記事を数日分一気に書けた。

[ファーストUber]

オークランド空港についてからホテルに行かず直接マタカナまで行く手筈になっていた。マタカナまでは距離にして60kmほど、車で1時間の距離だ。車の数が年々増えるオークランドでは夕方の帰宅ラッシュの時間には毎度大渋滞をおこすようで、ビルさんのアドバイスでホテルにチェックインする前にラッシュを避けて空港からUberで直接向かうことになった。日本にはないUberで車を呼ぶことは良い経験になった。待ち合わせ場所に1分でTOYOTA PRIUSに乗ってやってきたのはインド系の運転手で彼はとても陽気でサービス精神に溢れていた。96Lの大形スーツケース3個を半ば強引に軽々と積み込んでくれて、颯爽とスタートしたが開始15分後には大渋滞に捕まってしまった。やはり飛行機の遅れのせいで帰宅ラッシュに被ってしまったのだ。プラス1時間以上の遅れを余儀無くされたが彼は汗をだくだくかきなかまらもずっと陽気で安全運転で向かってくれた。こんな遠くまでごめんねと伝えると『24年オークランド住んでるけどマタカナは初めて行くから楽しみだよ。一応ワイフに遅くなること伝えとく。」との真向きなコメント。
この時チップあげようと思った。

一生懸命だけどちょっとおバカな彼はプロビダンスを完全にスルー。プロビダンスの看板を過ぎても一向に止まろうとしない。プロビダンスの看板から畑までめっちゃ離れているのか?と考えていると、「到着したよ」と車を停めた場所は看板から15分ほど走った、海が見下ろせる農場だった、、 
やっぱさっきの看板のとこだろ!
その時にたまたま通りかかった親切な方に車で先導してもらって来た道を戻り、やっとプロビダンスまでたどり着いた。

[プロビダンスの迫力]

道路までビルさんが笑顔で出迎えてくれた。夕日が輝く18時半ころの到着だった。
オーナーのジムさん、奥さんのジェーンさんをはじめご友人の方々がシャンパン片手にで迎えてくれた。待ちきれずに飲んでたよ!と言ってすでにマグナム一本空いていたのは驚いた。ビルさん自身がボートに乗って釣ってきた縞鯵の燻製を薄切りにしたパンに乗せたアミューズはルクレールブリアンのシャンパンによくあった。
そのままシャンパン片手にワイナリーの散策に誘われた。外にでると目の前に広がっていたのは、いままで他のワイナリーでは見られなかった腰を屈めないと葡萄に触れないほどの低めの仕立て、赤茶色のコロコロの塊になっている土、そして収穫間際なのに鳥よけネットが一切ない美しい葡萄畑が日当たりがよい片側だけに広がっていた。


畑を作るとき外側にあった土を数メール削りとり、この土を露出させたそうだ。さらに一段下がった土壌の断面が見える場所にいくと今葡萄畑がある3〜5メールほど下に真っ赤な鉄分を多く含んだ土の層があり、この土壌がプロビダンス独特のフレーバーを発生させているとのこと。この話は衝撃的だったが、品種に関わらずプロビダンスに共通する香りを以前から感じていたので非常に腑に落ちた。

 
さらに鳥が実を啄むことを防ぐ為に専業のハンターを雇っているそうで畑の肥料と化している鳥達を何羽か見かけた。ネットを張ることでで日照が妨げられるのを防ぐ為らしい。コスト面や手間面の効率化は望まず土地と話し合いながらその場所でできる最良の選択をして、最も良いワインを造る為にやるべきことをシンプルに忠実に行っていることを強く感じた。


地下に行くと新品のオーク樽の空樽だけがいくつも眠っていた。ここ数年様々な事情でワインを造ることができておらず、今年も大雨やうどんこ病の影響で思うように葡萄が実らず断念するできか悩んでいた。(結局その1週間後に断念することを決めた)完全な自然農法の作り手にとっては時として管理がきかない自然の気難しさに振り回されることもある。全ては奇跡と努力の上に最高のワイン造りは成り立っている。以前にも増してワインを販売させてもらっている感謝の気持ちと緊張を持つことができた。 


その後部屋に戻りメインディッシュの鯛のフィッシュ&チップスを大物の鯛を釣り上げたジムさん自身が振る舞ってくれた。オリーブオイルのみで揚げた薄衣の鯛はNZで食べたどのフィッシュ&チップスより軽やかで美味しかった。それに合わせてスペインの13年熟成のボリューミーなSB、フランスローヌのニュフデパブの白、ポルトガルの熟成感のあるアルバリーニョが次々に開けられる。どれも素晴らしいワインでどんどん進んで行く。ジムさんは曲をリクエストして踊りながら陽気に飲んでいる。
そんな時間はあっという間に過ぎ去り、解散の時間となった。

あれ?そういえばプロビダンス飲んでない、、
とよぎったのは帰りの車のなかだった。

翌日ワイヘキ島に行くフェリーの中でジムさんに聞いてみると、
ワカヌイで肉ばかり食べてるだろうからと魚を用意してくて、NZのワインやプロビダンスも好きなだけ飲んでるだろうから様々な国の白ワインにしてくれたそうです。プロビダンス飲みたかったら言ってくれたらいくらでも出したのにっとのこと。
お気遣いに感謝しながら、主張する重要性を知りました、、
触れる全てに発見があり、この旅で最も刺激的な夜となりました。


おわり