熊谷ソムリエのNZ旅行記

ニュージーランド旅行記 〜 1

ニュージーランド旅行記
2024.3.20〜3.31

経緯
私はワカヌイとニュージーランドに出会って今年で10年目になります。元々NZのことは羊がたくさんいるキウイフルーツの国としか知りませんでした。NZに関わる仕事をしていく中で少しずつ知識が増えていきました。最近は接客中の会話の中でお客様に当たり前のようにNZに行ったことがあるものだと勘違いされて現地の詳しい話をされることもしばしばあり、話のコシを折らない為に最後まで「実は行ったことがないです」と切り出せない時さえありました。こんな状況を打開する為気合いを入れて家族でNZ旅行へ行くと決めたのは2023年1月のことです。
結婚10周年の記念でなにかをしたいと思ってい検討していた中、家族内ミーティングで幾つかの有力な案を僕のプレゼンが退けて「ニュージーランドで世界遺産の星空を見る旅」が採用されました。その後一年間かけて準備をして、回るルートや期間、ホテルやレンタカーを含めた交通機関、現地の情報を集めて挑みました。結果としては想定以上の素晴らしい体験ができたと思っています。
金城さんをはじめビルさん、佐藤さん、有休をくださった皆様、協力してくださった方々のおかげです。ありがとうございます。私達だけではとてもあのような経験はできなかったと思います。
感謝の気持ちを込めて今回のNZ旅行の経験をスタッフの皆様と共有させて頂きたいと思います。時系列で体験と調べた情報を交えながら書いていますので、相変わらず長めな文章になってしまいます、、ご興味がある方のみでもちろん大丈夫です。
これが何かのお役に立てば幸いです。

ニュージーランド一日目 
到着とクライストチャーチ周辺

1.出発、到着まで
現在唯一日本とオークランド繋ぐエアーNZは ANAとの共同運行となっており、日本語での案内、日本語字幕ありの映画も多かった。日本人のCAもいたが我々のエリア担当は白人女性のCAさんで英語オンリーだった。早速「前の席が空いているから好きに使っていいよ」みたいなことを言われて親切過ぎて逆にうろたえてた。
(遠慮して結局使わないでいると他の席からおじいちゃんがやってきてずっと寝てた)
エアーNZの三列シートはスカイカウチと呼ばれ、繋げてベットのようにフラットにできる。1人で3シート分とって完全に横たわりながら11時間のフライトに備える方もいた。エコノミーでは最高クラスの贅沢。
ニュージーランドの時間に合わせた夕食、朝食になっており14時半からのフライトの場合、現地は18時半、その為すぐに夕食だった。そうとは知らずに乗る前にチャーハン大盛りと刀削麺大盛りを成田で食べた直後に即夕食だったので、かなり厳しい戦を強いられたが、提供されたすき焼き丼をなんとか食べ切った。お酒はスタインラガークラシックをはじめワインはPN.CS.SB.CHがあり全て無料。ヴィラマリアなど比較的カジュアルなワインではあったが常態がよくNZワインの魅力をしっかり伝えていた。(スタッフのNZワイン教育にも力を入れているようだ)飲み過ぎには注意したい。
トイレは常に清潔が保たれ、内部の間接照明も紫がかった色で美しく、配慮が素晴らしかった。着く前から嬉しい気持ちになり僕はほぼ寝ずに本を読んだりトップガンマーベリックなどを見てました。(家族はスカイカウチで横になってぐっすり)

早朝5時前にオークランド国際空港に降り立ち、厳しいと有名な検疫も思いの他スムーズに潜りぬけ、ゲートを抜けてすぐのところにいきなりオールプレス!早朝から大混雑しており店員さんはかなり忙しそう。笑顔はありませんでした。本番のフラットホワイトは苦味が強くちょっとアンバランス。軍配は東京のオールプレスに。近くの自販機の水はなんと600m Iで400円!震えました。 
国内線へ乗り換えてクライストチャーチに向かいます。グリーンのラインに沿って国際線から国内線へ歩いて向かいましたが、非常にわかりやすくバスに乗る必要はなかったです。所要時間は15分ほど。成田に比べると非常にコンパクトな空港です。
ロスタイムがなくスムーズに来過ぎて国内線の待合室で1時間以上待って、日本より1時間くらい遅い朝焼けを拝んでから8時半のフライトでクライストチャーチへ。あまり高度を上げないで飛行しており、朝日を浴びて輝く雄大な大自然を楽めました。
クライストチャーチ空港はオークランドに比べるとノスタルジックな雰囲気の空港でした。(今にも壊れそうな古いUFOキャッチャーなどもありました)レンタカーの受け取りもスムーズで希望通りのTOYOTA RAV4のダークグレー。希望して予約しても難癖つけて適当に空いてる車をあてがわれると思っていたので、それだけで嬉しかったです。新しい車体で乗り心地も素晴らしい。(後々ガソリンの入れ方はなかなか苦戦しました) 外に出た瞬間に刺すような直線的な日差し、風と共に強烈な花の香りがしました。NZはどこに行っても花や木が生き生きといていて香りが強く感じました。ちなみに紫外線の強さは日本の7倍ともいわれ、生まれて初めて日焼け止めをつかいました。紫外線の強さは植物の成長とも関係ありそうです。
そして道路に出ると、走る車は8割日本車。国内で車を製造してないNZは安くて機能的な日本車が昔から人気があり、古い中古車は日本語で音声が流れたりするらしいです。イギリス式で右ハンドル左側車線も日本と同じで、日本人旅行者が運転で旅をしやすい国です。(19世紀にナポレオン率いるフランスにヨーロッパで一度も統治されていない国であるイギリス及びその統治下は左側車線)

2 クライストチャーチと周辺
空港から市街地までは車で15分ほど。到着してレンタカー借りてもまだ午前11時。長いフライトで疲れていたので早くホテルに行って休みたかったがさすがにチェックインには早すぎるので、ニュージーランドの道路に慣れる為に軽くドライブすることになり、目的地をアカロアに設定しました。アカロアはクライストチャーチから南に80Kmバンクス半島にある港街。日本でいう江戸末期頃フランス人によって開拓された土地であり、火山性地形が織りなす絶景や世界最小のイルカ、ヘクターズドルフィンを見ることができます。フランス様式を感じる風光明媚な街で天気の良さも手伝いさっそく最高のドライブとなりました。道中はじめて見るNZの地形だったので他のどこもこんな感じか?と思っていましたが、その後を振り返るとこの辺りの地形は珍しく、高く急な丘の点在や穏やかな入江の雰囲気は類をみませんでした。予定にない軽い気持ちのドライブだったので長くはいれませんでしたが、次回は絶対ここに泊まりたいと思わせる街でした。帰りに買ったアイスクリームはあまりにも量が多すぎて半分以上食べれませんでした。予想よりあっさりとした甘さで食べ疲れはありませんできたが、後半は完全に飽きました。ホーキー・ポーキーはキャラメルの食感の存在感弱く、普段のワカヌイのホーキーの完全勝利。
公道で100キロだして(ニュージーランドは街中以外は高速道路くらいスピードだせる)クライストチャーチに戻り市街地へ。
クライストチャーチ中心部は古い建物が大切にされており、公共施設に加え民家にいたるまでクラシックなビクトリア朝時代を思わせる建物が目立ちました。一方でアート思考を感じる建造物も点在し、伝統と革新の調和を感じました。その共存の姿、温故知新はNZ中で感じることです。 
そんな街に一泊するので宿も100年以上前の洋館を改装した建物にしてみました。中心部にも徒歩で行けるこじんまりしたホテルでしたが、案内してくれた若い女性も「日本語話せなくてごめんなさいね」と笑顔でいいながらゆっくり丁寧に話してくれました。総じてNZの女性は優しい人多い。5時になったらワイン飲みに来てねとか言うのでワインを頂きに行ってから街を散策。(ほどよい雰囲気のワイパラバレーのPNとSB)外に出ると昼には感じなかった風の冷たさを感じて上着を着込みに戻りました。夏の終わりとはいえ1日の温度変化が激しいく夜は寒いです。
ガーデンシティとして名高いクライストチャーチ最大の公園ハグレー公園内にあるボタニックガーデンに歩いて行きました。平地を優雅に蛇行して流れるエイボン川が街の中心を走り、カヌーを楽しむ人もいました。船頭さんがいる船に乗るつもりでしたが店が既に閉まっていたので眺めることに専念。150年以上の伝統をもつ公園の植物は迫力があり、新宿御苑も凌ぐ美しさ。次は余裕をもって訪れて一日中散歩したいです。 
ディナーは地元の人達が集うNZらしい料理を出してるPoolというカジュアル店を見つけて入りました。手前にBARが併設され、テラスとカウンターが左側にあり、一段上がった右手にテーブル、奥にビリヤード場もあり様々な用途の人で賑わっていました。厨房はこじんまりしていて、金額も手頃だったので正直言って料理のクオリティは期待してなかったのですが、その考えは直ぐに変わりました。
注文したのはとりあえずのつもりで4品、前菜の地中海風ラムサラダはフェタチーズと合わせたギリシャスタイルで焦げ目がつくまでカリッとソテーしたラム肉(恐らく肩ロース)を熱々の状態で生の葉物に和えていました。底のほうに少し油が溜まってオイリーな感じもありましたが、パワーサラダとしてはパーフェクト。メインのラムシャンクの煮込みはフライドポテトにマッシュポテト、あと謎のオレンジ芋のローストが付け合わせになっており煮込んだスープに小麦粉などで濃度を調整したものをソース状にしてたっぷりと手前にかけてありました。ボリューム感ヤバすぎる。プラス、ピザマルゲリータとお子様プレートのフィッシュアンドチップスを注文。食べてる最中にウェイトレスが食べきれなかった持ち帰りできますよと親切に教えてくれました。(先に頼み過ぎだと教えてほしかった、、)子供に対する配慮も素晴らしくお絵描きセットを持ってきてくれたりキッズプレートの選択肢も多く、ディナータイムに1,400円でやってくれるのは驚きました。ピザは普通でしたが、その他全ての料理の味付けと温度帯も含めた仕上がりが素晴らしいく、チップ文化のないNZでもチップを払いたくなる店でした。ドリンクはBARがついてるのに関わらずワインの数が多く、ネルソンのリースリングとロゼを飲みました。ロゼも当たり前のようにリストにあり(ロゼだけでグラス3種類)その代わりSBがあまり押されていない印象でした。(他の飲食店もその傾向あり)せっかくなのでワインだけではなく、モンティースのタップビールも味見してみました。かなりライトでミネラルウォーターのような水のニュアンスがありました。ストレスがなくひたすら飲めそうな感じです。この日は寝てないせいかなぜか酒に強くて驚きました。
そのままフラフラ歩いて帰ってホテルでぐっすり。明日の起床は7時予定です。全てが上手くいく充実感だけが残る長い一日でした。密かにニュージーランドとの相性の良さを感じていました。

まだ一日目の記事、、長すぎる、、やっと書き終わったのが4日目のマンウトクックのホテル。深夜2時のことです。

終わり
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ニュージーランド2日目

ニュージーランド2日目
2つの目的地
[ワカヌイへ]
2日目の朝は快晴だった。
フルーツたっぷりヘルシーな朝食をホテルで頂き、チェックアウトをしてから今日はいよいよレイクテカポに向う。その途中少しばかり遠回りしてワカヌイビーチをGoogleマップの目的地に設定した。
100キロ出せるモーターウェイを快速で飛ばして道に迷うはずもない一本道をひたすら走る。進む毎に寂しげになりどんどん羊だらけの荒野になっていく。気がつくとアンズコフーズの車が目の前を走っていてそのお膝元に近づいていることを実感した。ワカヌイのバーに写真飾ってあるワカヌイスクールの前で記念撮影したかったが、生徒の子供達が校庭を走っており不審者扱いされるのを恐れて向かい側の通りにある看板で我慢した。フェードロッドまで行きたかったが無舗装道路になりGoogleマップでも検索できなくなったので断念した。そのくらい奥地ということだ。
一旦道を戻し途中羊達と記念撮影してワカヌイビーチに向かった。ここで育った羊と牛が東京のワカヌイで毎日お客様を喜ばせ、僕達を助けられてくと思うとなんだか感慨深かった。
ビーチは強風に見舞われ、波は高く荒々しくうねっていた。飲み込まれたらほぼ確実に生きては戻れない迫力だ。キャンパーバンが何台か止まっていたがあとはサスティナブルなボットン便所と一軒屋が一つあるだけだった。直径3センチほどの平たい丸石が果てしなく転がっている大荒れの海からは無慈悲な南極の風を感じた。
[レイクテカポ到着]
ワカヌイを後にしてその後は順調にレイクテカポに向かった。テカポ湖はニュージーランドで4番目に大きい直径30kmの湖。特に有名なのは美しい湖をバックに咲き誇るルピナスと世界遺産に登録間近の星空。(この場所に来るのが家族でくるNZ旅行のきっかけであり最大の目的)
透き通る湖の水はミネラルウォーターのようで飲めそうだったが、旅行先で病院に行くのが怖くてやめた。
湖が一望できる巨大なオーブンつきのキッチンがついた無駄に広い二階建てのヴィラを借りたので、夜ご飯を自ら作る為まずは最寄りのスーパーマーケットにむかった。最初に一個ずつから買えるキロ売りのフルーツの数に驚いた。とりあえずNZ産のフルーツと見たことない芋は全部買った。
海外ではもちろん初めてだが、旅行先でその土地のものを買って厳しい環境下(調味料や器具が揃ってない状態)で料理をするのは僕の密かな旅行の楽しみで、家族もこれに期待を寄せている。日本円で3万円越えになったのは少々やりすぎた。日本のさつまいもの原種とも言われるクマラという芋をぶつ切りのラムと一緒にローストするとその相性は素晴らしいものだった。
1日目にクライストチャーチのレストランで食べた謎のオレンジイモはこのクマラだったのだ。NZはイモが主食でオールブラックスのアンダー20の選手達がワカヌイに来た時もひたすらフライドポテトを食べていたように皆イモをびっくりするくらい食べる。そしてどのレストランで食べても美味い。日本で言うと定食屋で米が美味しくたけているのが当たり前の感覚か?
フルーツは小ぶりなものが多く、ミニりんごをはじめ洋梨、プラム、モモ、黄桃、フィジョア、和なしなどがあった。イモもそうだが甘すぎないのが基本的な特徴で食事にも合わせやすい。僕もビタミン補給として毎朝フルーツを食べた。日本にはないNZのフルーツフィジョアは外見は小ぶりなライムのようでトロピカルフルーツにマスカットの香りを混ぜたような華やかなトップノーズがあり、酸味はあまりなく後味に独特の渋みを感じた。残念ながら家族には不人気、、小さめに切ってリンゴと合わせて軽くレモンを絞りヨーグルトに乗せて食べると美味しかった。
テカポは一大観光地で大きいスーパーは近場に一つしかないので、価格設定は少々強気だとその時は感じた。(他の場所のスーパーもぜんぜん高かった)グリーンマッセルと肉は割安感があったがそれ以外は日本より安いものは一切なく卵は8個入りで800円した。また、ビニール袋を極力出さないことに本気を出しており、持ち帰りの時紙袋と段ボールをくれた。どこでもこうなので日本から持ってきていたビニール袋は希少品だった。(妻は移住するくらいあらゆるものを日本から持ってきていた。爪切りまであって驚いた) 
ワイン売り場は非常に充実しており、ロゼの品揃えには驚いた。よく見かけるワインもいくつかあってちょっぴり安心して、思わずカフランギのロゼを20ドルで購入した。スーパーでのワインの価格はかなり高めでニュージーランド産の良質のワインは現地でもしっかりと価値を認められるようで嬉しさもあった。
[夜の散歩]
8時頃に日没となり食後入浴してから星が綺麗に見える23時頃外に出かけた。昼の風はおさまり、快晴となっていた。湖に光の塊のような月が反射して薄白く輝く美しい夜だった。もしこれが日本なら素晴らしい月夜として良い思い出になったであろう。しかし、今日は星が見たかった、、月が明るすぎて期待するほど星は見えずどんどん遊歩道を進んで行ったが、増えていくのはうさぎばかり、、明日は車でもっと山のほうまで行ってみると決めて、真夜中の暗さにビビりまくる娘をおぶって帰宅した。
やはり夜は寒さが増した。対策をしていたので全く問題無かったが、知らないと夜の散歩は苦行となる。ずっと暖かいリゾートもいいが一日の中にメリハリと緊張感があるNZの気候も悪くないと感じた。
おわり
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ニュージーランド3日目

ニュージーランド3日目
[レイクテカポの休日]
この日は展望台近くにある湖が見下ろせるアストロカフェに行く予定だったが、下調べが弱く土曜日は定休日だと当日知った。(そもそも休みが多すぎる店)半袖でも暑いほどの日差しの中、良き羊飼いの教会へ徒歩で向かった。神聖な教会の中の横長の窓からは湖とその背景に絵画のような山々が折り重なってグラデーションになっていた。入場は無料だが寄付を求める看板がありそれさえもキャッシュレスで行えた。(結局一度もニュージーランドドルの現物を手にすることはなかった) ルピナスが一面に広がっているのは真夏のトップシーズンだけで、この時期はまばらに残るのみだったので想像だけで楽しんだ。教会の前には大小様々が石が転がったエリアがあり、訪れた人が記念におこなかったのかその石を積み重ねた小さな積み石の塔がいくつもいくつも立っていて、美しいコバルトブルーの湖が相まってさながら賽の河原のようだった。(日本人がみたらちょっぴり怖くなるような景色)ひたすらこれを破壊している小鬼のような金髪カールの少年が親に叱られていた。
帰り道はお土産屋さんがたくさんあり、観光客で溢れていた。中国語が飛び交う店も多く、日本勢はここでも押されていた。
その後車に乗り換えてテカポ湖を別の角度から見ながら隣にあるより広大なプカキ湖へ、さらに隣町のトワイゼルまで行ってみた。このプカキ湖とテカポ湖は人工的に水量管理されている天然のダムのような役割があるらしく実はこの2つの湖を利用した水力発電でNZの電力の半分を発電しているらしい。なんともスマートで美しいやり方だ。(NZには原発が一つもない)
トワイゼルはアオラキマウントクックの入り口の街でキャンパー達の聖地のような場所。みんなワクワクした顔で自転車や船などを運ぶ車が多かった。この国ではアウトドアは最高の楽しみのようだ。沈む夕日をプカキ湖越しに拝んでホテルに戻った。
[食事のあれこれ]
ランチにNZで有名なミートパイを試しに食べてみたが、かなりお腹いっぱいになる。直径10センチほどのパイの中にマッシュポテトとこれでもかと牛肉の煮込みが詰まっている。200gはあろうかと思われる肉の量で10$ほどなのはかなりコスパ良いと感じた。
夜のメインはキングサーモンのソテーベビースピナッチを添え。ニュージーランド産のオリーブオイルは質がよくイタリア産のものより少し安かった。同じブランドのオイルが味わい毎に4段階で印がついていて分かりやすかった。アカロアに行った時斜面にオリーブ畑があったのを思い出した。そのうち日本で売られている日も来るかもしれない。
グリーンマッセルは巨大な12pで10$ほど、真空で海水が僅かに入った状態で売られており鮮度はかなりよかった。ビックブラウンマッシュルームと小エビと合わせてワイン蒸しにした(白がなかったのでカフランギのロゼ蒸しで) ロゼを楽しむ構成にした。ワインも素晴らしかった。とにかくフレッシュで開けたては僅かに発泡を感じ、NZ産の小ぶりなスモモのような香りと柑橘系の酸が食事を引き立てた。
[星空へ2回目の挑戦]
テカポ2日目の深夜は車でちょっと山まで行ってみた。星を見るツワーも存在するが観光客が多いのと子供では参加が難しいのでやめた。
うさぎやらハリネズミやらが我が物顔で道路を歩いていた。街灯も一切なくそれだけ車が少ない。僕達だけが別な世界に行ってしまったのかと思うほどだ。当然の如く月は満月を2日後に控えた大きさだったが逆側の空には天の川とサザンクロスがはっきりと確認できた。ずっと空を見ていると星が手に触れるほど近くにあるように錯覚して、現実なのか空想世界なのか境界線が合間になる。寒さもあり長時間の滞在は出来なかった。
山をくだり民家の明かりが見えて現実世界を実感してホッとした。
明日はマウントクックへむかう。
おわり
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ニュージーランド4日目

ニュージーランド4日目

[マウントクックへ]
レイクテカポを後にしてアオラキマウントクックに向かった。
次の宿にもキッチンがあるようだが、設備が実際に見てみないと分からない上に近くにスーパーは一切ないらしい。ホテルのレストランで済ませることももちろんできるが、1人100$近くするディナービュッフェはあまり気分が乗らなかったのでできるだけコンパクトにして食材を持ち込んだ。結局行ってみると初めてみる熱線を使った古めなコンロがあり、小さい鍋しかないなかなんとかリングイネを茹でて昨日残った半身のサーモンとベビースピナッチを軽くソテーしてから乳脂肪分が多いフレッシュミルク(クリームが無かった)で煮てキングサーモンクリームパスタを作った。トングも箸もがないのでスプーンとホークでサーバーをつくってパスタを盛り付けた。こーゆーの子供に大人気。

[絶景のトランピング]

マウントクックへ向かう山道の道路は目に映る全てが絶景だった。ほぼ植物がなく、あっても牧草か低木しか生えてないのでそのフォルムがしかりと分かる尖った山々は日本ではまず見れない。起伏にとんだ地形に牛や羊が放し飼いにされていてどうやって管理しているのかを知りたい。柵を余裕で飛び越してくつろいでいる彼等、車に轢かれてないのが不思議でならない。(ほかの動物はめっちゃ道路で横たわってる)
南島を東西に分断するように3,000メートル級の山々が連なるサザンアルプス。その最高峰標高3724メートル富士山よりも高いマウントクック周辺にはその雄大な自然を楽しむ為に様々なトランピングコース(トレッキングのNZの呼び方)がある。片道2時間のスタンダードなコース、1日がかりで険しい山々をこえてゆく本格的な装備が必要なもの、かと思えば途中まで車でショートカットして15分ほどでビュースポットに行けるものもあった。子供にいる家族にとって、より安全でできるだけ平坦なトラックを選んで、氷河もマンウントクックも間近で見れる2コースにチャレンジした。
一つ目のコースのゴールにあった氷河は地球温暖化の影響でここ10年で一気にとけてほとんど湖となっていた。氷河によって山の石が細かく削られた影響で成分が水に溶け込み美しい白藍色になっていた。2コース目の中盤で都会育ちの娘はもう歩けないと言うので僕は彼女を抱えて半分以上登った。おかげでショートトラックとはいえかなりの満足度得られた。

[ハーミテージホテルにて]

このあたりには100年以上の歴史があるハーミテージホテル系列の宿泊施設が幅をきかせていて、管理がしっかりとしているホテルはほぼここだけだった。高級ホテルの分類であるはずなのにロビーやカフェはテンション高めなアウトドアラバーで溢れかえっていてドレスコードはゴアテックスのジャンバーだった。(テーラージャケットの人は1人もいない)登山の歴史や偉人の展示もあり興味深かったが子供が嫌がるので見れなくて残念だった。夕食前バーで軽く飲んでいると昼の天気が嘘のような土砂降りが始まり朝まで止むことは無かった。ここのバーでもグラスワインの数が非常に多くてロスになんないか一瞬心配になったが、周りのおじいさま方の飲みっぷりをみてその考えは吹き飛んだ。その日の早い時間のバーは70代ほどのグループが多く、皆様穏やかな笑顔でワイングラスを傾けていた。様々な言語が聞こえ、何を話しているかほぼ分からなかったがきっと若いころの思い出話や今の若者の弱体化を笑っているに違いないと思った。皆様満足気な表情で自信に満ちた皺が刻まれ凛々しい方々ばかりだった。ニュージーランドの旅は人生の締めくくりを語らうのにも相応しい。今はホットチョコレートを飲んでる娘と次回はワインを飲みながらここでまた話たいと思った。

明日はクイーンズタウンへ

おわり
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ニュージーランド5日目

ニュージーランド5
[クイーンズタウンへ]
翌朝は細かい霧雨が山々を覆い隠してマウントビューの部屋の意味がまるで無かった。昨日は芝生でじっとしていたうさぎもどこかに行ってしまった。現地では害獣呼ばわりされるうさぎ達だが観光客には嬉しい客人だった。
朝食のビュッフェを食べている時に光が差し込み徐々に霧が晴れて山が徐々に姿を見せていく様は例え用のない美しいさで天候の乱れに感謝した。虹が生まれる瞬間を眺めながらチェックアウトしてクイーンズタウンへの3時間のドライブが始まった。
「道なりに60キロです」と音声ナビが言った時は笑った。ナビがほぼ必要ないほどの一本道が続いていた。
セントラルオタゴに入ると左手に翌日行く予定のギブストンバレーがあり、その他にもワイナリーが点在しているのを見てそれまでの荒野ではない葡萄畑の風景に興奮した。その先にクイーンズタウン空港がありもう一山登るとワカティプ湖が広がりいよいよクイーンズタウンに入った。 
クイーンズタウンは古くからの観光地及び別荘地でビクトリア女王に相応しい美しい場所という意味でこの名がついた。様々な湖や山を生かしたアクティビティがあり、バンジージャンプの発祥地とも言われている。バンジージャンプで有名な橋もトイレついでに見学したが、巨大なスクリーンで実況されていて落ちる人も見る人も楽しめるエンターテイメントになっていた。街を日本で例えるなら軽井沢に少し似た雰囲気。
[国鳥キウイについて]
そんなワクワクの人々を横目に僕らはチェックインを済ませて真っ先にキウイパークに向かった。キウイパークはゴンドラ乗り場の麓にある施設で、希少動物の保護を目的とした個人資本の小規模動物園だ。ニュージーランドの鳥達が限りなく自然に近い状態で展示され様々な原語での音声ガイドが詳しく説明をしてくれる学べる施設になっている。すでにキウイファンになっている娘がゴンドラには興味ないからここだけは行きたいとのことで選んだ。入場料が1人5,000円だったことに出来るだけ動揺しないようにエントランスを潜り、NZの原生林を守る園内を散策した。
キウイというニュージーランド固有の鳥は国を象徴する鳥であり、彼らの愛称としても使われるほどに愛されている。ワイルドキウイは非常に少なく、夜行性ということもあり野生ではほぼ見ることは不可能らしい。その為こちらの園ではキウイ達の生活時間を逆転させて(夜にライトアップして昼のように、昼は暗くして夜のよう)通常の時間に暗闇の中で活動的なキウイを観察できるようにしている。
キウイは特殊な鳥だ。体は丸ぽく一見すると羽は見えない。体毛は尖った髪の毛のようで、くちばしの先端付近に鼻があり鼻をヒュンヒュンいわせながら歩き回り餌を探しまくる。体温が普通の鳥より2度低くて哺乳類に近い。体に対して恐ろしく大きな卵を産みオスが80日間守りきってから羽化、寿命は60年から100年になるものもいるらしい。
元々天敵がいないので可愛らしい呑気な姿になったが、今は外来のオコジョやイタチなどの天敵がわんさかおり絶滅危惧種になってしまった。
この施設では大きく育ったキウイを自然に帰す活動をしており、飼育場の土も木も岩も餌の生きた虫さえも全てニュージーランドの原生のものを使っている。昼夜逆転している彼等を自然に帰す時、時差ボケはないのかと心配になった。
帰りに2匹目となる鳴き声をだすキウイのぬいぐるみを買ってアイスリームを食べて街を散策した。有名なファーグバーガーはこの時長蛇の列で並ぶ気になれなかったので、比較的空いている朝1番の時間に再チャレンジすることにした。
[クイーンズタウングルメ]
その後エリックスフィッシュ&チップスに行った。魚の種類、芋の種類が細かく選択できてカスタマイズできるスタイル。僕はフィッシュ&チップスで最良とされるブルーコットと言う魚をを試してみが、これは流石の美味しさで白身の厚みとしっとり感は他の魚ではなかなか出せない。鱈に近いがもっとプリっとした感じ。
ディナータイムは1ヶ月以上前に予約していたボツワナブッチャッリーというレストランに行った。ボツワナはNZにはオークランドとクイーンズタウンあり、オーストラリアにもいくつかあるレストランで中々評価が高かく、価格帯もワカヌイに近い感じだったので視察も兼ねて選択した。20時15分に予約し、店内はど満席で多いに賑わっていた。
前菜はブラフオイスター、ダックレバーのソテー、カリフラワーの丸ごとロースト、メインは骨付きラムショルダーの低温ロースト1.2kにクマラフリットを付けた。他にも面白そうな料理がいっぱいあったが量的にこのくらいが限度。(結局お腹いっぱいになりすぎてデザートまでいけず) 
初めて食べる時期限定のブラフオイスターは小ぶりで平たいカキで日本に似た種類はない。一見すると正直言って美味しそうには見えないが、口に入れると臭みや雑味が全くなく後味はどこまでもミルキーでピュア。確実にワインが進む。ダックレバーは状態がよく新鮮な感じ、火を通し過ぎず仕上げて甘辛いソースで合わせていた。 
メインはインパクトはあった。しかし、低温ロースのはずがちょっとパサつきがあり食べ疲れを感じた。塩気がボヤけており、ついてくる2種のミントソースとバーベキューソースをかけてもまだのってこない。
おそらくあらかじめ火を通しているのを再調理しているようで、メインはオペレーションに傾いているように感じた。やはり一つ一つ丁寧に肉を焼くワカヌイのような真剣な愚直さが人を感動させる。
店内は満席でウエイターは足りていないようだったが、担当の方は常に現れて大丈夫?楽しんでる?毎回聞いてきた。忙しくても気にかけることのアピールは素晴らしい。
ワインはグラスの種類が多すぎてビビったと同時に安くても24ドル以上なのはさらにびっくりした。普通に飲んだら1人2杯で10,000円超える、、明日からはワイナリー巡りがはじまるので控えめにして、前菜でレバーに合わせてドライなゲベレツトラミネールとメインでは地元セントラルオタゴのサブリージョンアレクサンドラのPNをグラスで頼んでみた。グラスの品種や産地が多様で少人数でも楽しめる感じのリストだった。
この日は祝日だったので15%の上乗せがあり会計は400$ほど(NZでは祝日に働いたスタッフに1.5倍の給与を払う法律があり会社組織の飲食店では会計に10から15%ほどのせるのが通常らしい)
店を出ると外は土砂降りとなっていた。
タクシー呼ぶよと言われたが断って折りたたみ傘に3人で入って歩いて帰った。クイーンズタウンはコンパクトな街でタクシー呼ぶのも申し訳ないほどの距離に全てが集中している。
この日は早めに寝て朝一のファーグバーガーに備えた。
おわり
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ニュージーランド8日目

ニュージーランド8
【ワイン島ワイヘキへ】
オークランドのフェリー乗り場ダウンタウン口に朝9時45分にビルさんと待ち合わせてワイヘキ島へ向かう。
さすがシティ・オブ・セイルズと言われるオークランドだけあって、アート作品のような美しいボートやクルーザー達が優雅に海に佇んでいた。
この景色が見たくて港の近くのホテルにした為、図らずともフェリー乗り場までは徒歩5分程度の距離だった。
フェリーから見える朝の大都市オークランドと点在する島々のコントラストは素晴らしいく、島に着く前からワクワクした。800年ほど前の火山活動で生まれたNZで最も新しい島であるランギトト島を通り過ぎるとワイヘキ島が間近に迫った。コバルトブルーの海と砂浜があり、1週間前に見た南島の荒れ狂うワカヌイビーチと比べると同じ国とは思えないほどの差を感じた。日本でいうと沖縄と東北の違いのような感覚。
【パッセージロックへ】
到着後レンタカーに乗り換えてパッセージロックに向かった。リゾート感があるハワイの田舎のような雰囲気の街を横切って山のほうへ進んでいく。マヌカの木が多く自生する島内は起伏にとんでいて様々な景色を楽しめた。
パッセージロックに着くとオーナーワインメーカーのデイビッドさんが出迎えてくれた。さっそく、ワカヌイに送る予定の造り途中のワイン試飲するかい?と言って2024年の今年採れた葡萄の白濁したSBを試飲させてくれた。まだ糖が残ったアルコール発酵中の酵母の香りがあるワインは微発砲でジューシー、優しい旨味があり普段のSBとは全く違う。その為仕上がりはなかなか想像出来なかったが純粋においしかった。
レストランの経営もしているパッセージロックは自前のワインだけであらゆる料理に対応できるほどの様々な品種や造り方のワインをラインナップしていて、その全てを試飲させてくれた。魚醤のソースがついた地元ワイヘキ島でとれたパシフィックオイスターのTENPURAをつまみながらSB、ヴィオニエやシャルドネ。赤ワインに移行すると何度も飲んでるはずのシラーが素晴らしく美味しく感じた。その理由は単に現地で飲んでいるからだけではなく、グラスの影響が大きかった。試しに他のグラスに変えて飲んでみたが明らかにオーナーに提供されたブルゴーニュグラスのほうがパッセージロックシラーをより魅力的なものにしていた。デイビッドさん曰く、人もグラスも腹が出てるほうが緊張感がなくて(おおらかで)良いだろ。とのこと。今後パッセージロックはずんぐりグラスでの提供を推奨したい。また、ワカヌイでは扱いがないスペシャルなワインのライナップもありこれまで良年に2回しか造ってないデイビッドさんの名前を冠したシラーは特に素晴らしく。ワカヌイへのお土産にする為購入させてもらった。
肉が焼けたから気に入ったワインを持って席についてと言われて朝一の大量ステーキにちょっと戸惑いながら着席した。グリル板の下からは炭、横からは薪をセットできるピッツァの窯を改造したような特殊なオーブンで焼かれたラムラックは2才からラムチョップを食べてる娘がNZで1番美味しかったというほどの仕上がりだった。(トマホークの牛ステーキは香りは良いが火がしっかり入っていた) 
開放的な店内は葡萄畑が一望できて素晴らしい眺めだった。食事中に降り出した雨が嘘だったかのように晴れ渡ったころに次の目的地に向かった。
[マンオーワー]
マンオーワーはでワイヘキ島の20%を所有するオーナーが経営するワイナリーだ。セレブリティなオーナーだけあってレストランの目の前、手が届きそうなところにマンオーワーベイと看板があるプライベートビーチ、店内の設えも豪華で裏に子供用の遊具まで備えつけられ、遊び心にも溢れていた。
マンオーワーはイギリス海軍の戦艦の名前で、この島最初の産業はその戦艦を造る為の木材を提供することだった。一直線に伸びしなりがあるその特殊な木はマストにぴったりだったのだ。ここのオーナーはその頃からこのビジネスをしていた一族の末裔との事。
島内の様々な畑を所有している為どの場所でどの品種が適しているかを細かく研究しているようで遥か未来を見据えたワイヘキ最高のワイン造りを目指している。 
カウンターにはチリ出身の若い女性のソムリエが1人で立っていた。ワインの勉強の為ここで働いているらしく、マスターソムリエのステージ2を最近合格したらしい。(優秀だが、めっちゃお喋り) 
全てのワインの事細かな説明を落語の如く調子をつけながら表現豊かにしてくれた。パッセージロックのようなストレートな美味しさやおおからさはなく、変わりに品種を問わず一貫した一種の緊張感や難解さを持ったいわば玄人むけのワインが並んだ。同じ島、同じ品種のラインナップでも造り手や考え方次第で全然違う。レストランではターゲットが違うワインをリストに同居させていることで様々なお客様に合ったワインを提供できる。キャラクターを見極めてシーンに合わせて販売していきたい。ワインではなく[MAKE WINE NOT WAR ]のバックプリントがあり、着るタイミングに困るマンオーワーのオリジナルTシャツをお土産に頂いて次の目的地に向かった。
【ストームウッド】 
美しいビーチを後にして無舗装の道路を進んで行き、丘をこえたところに真っ白な木製の門があった。
看板も何もない入り口、個人の邸宅のようなワイナリーだなあと思って中に入ると本当に個人の別荘だった。
様々なオブジェやヘリポートがある庭の向こうに葡萄畑、外階段を上がると丘の上から海が一望できるプール、つい最近アメリカのアーティストのピンクが遊びに来たという、豪華絢爛なホリデーハウスの一角にストームウッドワイナリーはあった。
ワインメーカーの2人は普段はオブシディアンなど他のワイナリーで働いており、ここのオーナーから2人の好きにしていいから良いワインを造ってくれと言われてるようで、規模は小さいが最新最高の機材も揃えていた。その為2人のチャレンジ精神溢れるワインが並んでいた。
大理石のカウンターのすぐ裏に新樽が並ぶカーブがあり、バトナージュの実演や発酵中のワインを見せてくれた。新樽で発酵させたシャルドネは40%だけマロラクティック発酵させていて果実酸の爽やかさを残しながらそのバックに繊細ななアロマを隠している。多角的な酸を感じとれるお洒落な仕上がりだった。ワイン単体のインパクトより食事と合わせた時により本領を発揮できる仕立てになっているように感じた。
スパイスが先頭にくる印象的なシラーは以前パッセージロックが所有していたワイヘキで1番古いシラーの畑を買い取って造っている。その畑は数年不作が続いてデイビッドさんが手放したようだが、2020年以降それから数年良い年が続いているようで2人は大いに喜んでいた。化粧付けのない純粋さを感じる仕上がりで、重すぎない繊細な味わいは現代的なタッチでこちらも間違いなく食事を楽しませてくれる。
次回新しくワカヌイのワインリストに入るワイナリーであるストームウッドは知名度はまだまだ低いが真剣に少量の良質ワインを造り出していた。NZ国内でさえマニアックなワインを日本で扱えるのは本当に面白く有り難いことだ。
この辺りでもうほぼ完全に酔っている。
正気に戻った時は帰りのフェリーの中にいた。この時ビルさんが買ってくれたビール、スパイツサミットラガーは夕日が傾きだした船の上にピッタリだった。NZの政治や移民の問題、マオリと西洋人とのすれ違いなど地球の歩き方には載ってないリアルなNZの話をビルさんから教えてもらってとても勉強になった。
フェリー乗り場で一日中運転や案内をしてくれたビルさんに感謝を告げてお別れてホテルに戻った。
今回の旅の最大の山場である3日間のワイナリーツアーはこれにて幕を下ろした。行く前は少なからず不安もあったが全力で取り込む事で今まで見えてなかった様々なことを得る事ができた。言語化不能なほどの量のインプットの要点をなんとか文章にまとめることもできた。
迎えてくれた全てのワインメーカーの方々と特にビルさんには頭があがらない。心からの感謝をお伝えしたい。
次回が最終回!
おわり
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ニュージーランド7日目

ニュージーランド7

[さらば南島 そしてマタカナへ]

今日は昼過ぎのフライトでオークランドへ向かう。冷え込む朝となりクイーンズタウンから望むリマーカブルス山脈には昨日より雪がかかっていた。
まず、雨の中南島で1週間お世話になったTOYOTA RAV4にお別れした。
天候不良によりフライトの時間がおしたため想定していたよりクイーンズタウンとの別れをよりじっくり惜しむことができた。16時前に到着予定となった。
機内ではボーっとしているのに不思議と冴えがありこの記事を数日分一気に書けた。

[ファーストUber]

オークランド空港についてからホテルに行かず直接マタカナまで行く手筈になっていた。マタカナまでは距離にして60kmほど、車で1時間の距離だ。車の数が年々増えるオークランドでは夕方の帰宅ラッシュの時間には毎度大渋滞をおこすようで、ビルさんのアドバイスでホテルにチェックインする前にラッシュを避けて空港からUberで直接向かうことになった。日本にはないUberで車を呼ぶことは良い経験になった。待ち合わせ場所に1分でTOYOTA PRIUSに乗ってやってきたのはインド系の運転手で彼はとても陽気でサービス精神に溢れていた。96Lの大形スーツケース3個を半ば強引に軽々と積み込んでくれて、颯爽とスタートしたが開始15分後には大渋滞に捕まってしまった。やはり飛行機の遅れのせいで帰宅ラッシュに被ってしまったのだ。プラス1時間以上の遅れを余儀無くされたが彼は汗をだくだくかきなかまらもずっと陽気で安全運転で向かってくれた。こんな遠くまでごめんねと伝えると『24年オークランド住んでるけどマタカナは初めて行くから楽しみだよ。一応ワイフに遅くなること伝えとく。」との真向きなコメント。
この時チップあげようと思った。

一生懸命だけどちょっとおバカな彼はプロビダンスを完全にスルー。プロビダンスの看板を過ぎても一向に止まろうとしない。プロビダンスの看板から畑までめっちゃ離れているのか?と考えていると、「到着したよ」と車を停めた場所は看板から15分ほど走った、海が見下ろせる農場だった、、 
やっぱさっきの看板のとこだろ!
その時にたまたま通りかかった親切な方に車で先導してもらって来た道を戻り、やっとプロビダンスまでたどり着いた。

[プロビダンスの迫力]

道路までビルさんが笑顔で出迎えてくれた。夕日が輝く18時半ころの到着だった。
オーナーのジムさん、奥さんのジェーンさんをはじめご友人の方々がシャンパン片手にで迎えてくれた。待ちきれずに飲んでたよ!と言ってすでにマグナム一本空いていたのは驚いた。ビルさん自身がボートに乗って釣ってきた縞鯵の燻製を薄切りにしたパンに乗せたアミューズはルクレールブリアンのシャンパンによくあった。
そのままシャンパン片手にワイナリーの散策に誘われた。外にでると目の前に広がっていたのは、いままで他のワイナリーでは見られなかった腰を屈めないと葡萄に触れないほどの低めの仕立て、赤茶色のコロコロの塊になっている土、そして収穫間際なのに鳥よけネットが一切ない美しい葡萄畑が日当たりがよい片側だけに広がっていた。


畑を作るとき外側にあった土を数メール削りとり、この土を露出させたそうだ。さらに一段下がった土壌の断面が見える場所にいくと今葡萄畑がある3〜5メールほど下に真っ赤な鉄分を多く含んだ土の層があり、この土壌がプロビダンス独特のフレーバーを発生させているとのこと。この話は衝撃的だったが、品種に関わらずプロビダンスに共通する香りを以前から感じていたので非常に腑に落ちた。

 
さらに鳥が実を啄むことを防ぐ為に専業のハンターを雇っているそうで畑の肥料と化している鳥達を何羽か見かけた。ネットを張ることでで日照が妨げられるのを防ぐ為らしい。コスト面や手間面の効率化は望まず土地と話し合いながらその場所でできる最良の選択をして、最も良いワインを造る為にやるべきことをシンプルに忠実に行っていることを強く感じた。


地下に行くと新品のオーク樽の空樽だけがいくつも眠っていた。ここ数年様々な事情でワインを造ることができておらず、今年も大雨やうどんこ病の影響で思うように葡萄が実らず断念するできか悩んでいた。(結局その1週間後に断念することを決めた)完全な自然農法の作り手にとっては時として管理がきかない自然の気難しさに振り回されることもある。全ては奇跡と努力の上に最高のワイン造りは成り立っている。以前にも増してワインを販売させてもらっている感謝の気持ちと緊張を持つことができた。 


その後部屋に戻りメインディッシュの鯛のフィッシュ&チップスを大物の鯛を釣り上げたジムさん自身が振る舞ってくれた。オリーブオイルのみで揚げた薄衣の鯛はNZで食べたどのフィッシュ&チップスより軽やかで美味しかった。それに合わせてスペインの13年熟成のボリューミーなSB、フランスローヌのニュフデパブの白、ポルトガルの熟成感のあるアルバリーニョが次々に開けられる。どれも素晴らしいワインでどんどん進んで行く。ジムさんは曲をリクエストして踊りながら陽気に飲んでいる。
そんな時間はあっという間に過ぎ去り、解散の時間となった。

あれ?そういえばプロビダンス飲んでない、、
とよぎったのは帰りの車のなかだった。

翌日ワイヘキ島に行くフェリーの中でジムさんに聞いてみると、
ワカヌイで肉ばかり食べてるだろうからと魚を用意してくて、NZのワインやプロビダンスも好きなだけ飲んでるだろうから様々な国の白ワインにしてくれたそうです。プロビダンス飲みたかったら言ってくれたらいくらでも出したのにっとのこと。
お気遣いに感謝しながら、主張する重要性を知りました、、
触れる全てに発見があり、この旅で最も刺激的な夜となりました。


おわり

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ニュージーランド6日目

ニュージーランド6 
[クイーンズタウンの朝]
朝6時に起床。家族の眠りを妨げないよう抜け出して雨上がりのクイーンズタウンの早朝を1人で散歩して湖を眺めてからファーグバーガーに向かった。
今回はクライストチャーチから南下したが本当はクイーンズタウンから北上するほうがいいかもしれない。美しいと有名なクイーンズタウンのはずが、壮大なレイクテカポやアオラキマンウントクックをじっくり見た後だと山々や湖もなんだか見慣れた景色に見えてしまう。クイーンズタウンから景色をスタートしてればもっと段階的に喜びを得られたような気がした。(次回はさらなる絶景世界遺産ミルフォードサウンドまで行ってオーバーナイトクルージングをしてみたい)
朝一のファーグバーガーは5名ほどすでに並んでいた。隣のファーグベーカリーでフラットホワイトを買って様々な言語で話している人種の方々と共にバーガーを待った。20$以上のものはあまりなく、比較的リーズナブル。これだけの有名店ならばシステム化してガンガン値上げして、もっとお金儲けは簡単なはずだがそれをせずに信念を持って真面目にやっているのを注文前から感じた。
パリっと焼かれた歯切れが良いバンズがジューシーで肉感がある臭みのない新鮮なビーフパティを完璧にホールドしてあり、全くズレない。一口食べると飲み込む前に次をかじってしまうくらい夢中になってしまう美味さだった。そして朝から食べても罪悪感のない爽やかなフィニッシュ。
昔からバーガー好きで東京でも有名店は一通り巡った僕ですが、同じタイプを経験したことはない。どこまでもシンプルなのに唯一無二。これを食べる為にクイーンズタウンにまた来たいと思わせる一品でした。
[平坦ばかりではないワイナリー巡り]
既に喜ばしい気分にひたり、昨日の雨を忘れるほどの快晴の中クイーンズタウンの坂を登りギブストンバレーワイナリーに向かった。車で30分ほど。
チーフワインメーカーのクリスさんがリンゴをかじっている8歳の息子さんと迎えてくれた。クリスさんは奥様が日本人でほんの少し日本語が喋れた。ユーモア溢れる紳士で話すだけで好きになるような人だった。天然の岩盤をくり抜いて作った巨大なカーブへ向かい今日試飲するワインをあれこれ選んでくれた。畑の真ん中にある彼のオフィスに試飲するワインを置いて、絞り途中のシャルドネジュースを飲んだり、発酵中のPNを見せてもらった。太陽光がよくあたる丘の上に温度管理をしていない発酵槽がありその年の気候に従った自然なワイン造りをしていた。
目の前の畑にはリースリングやシャルドネ、1番最初の1983年のPNの木があり全て鳥よけネットが綺麗にかかっていてブドウを取り出すことさえ少し難しかった。リースリング以外のブドウは糖度が上がり、収穫を間近に控えた感じだった。小ぶりで種が大きく山葡萄に似た房だった。
2012年から最新ビンテージまでのグレンリーPNと畑違いのPNとCHを試飲した。
日本ではこれだけビンテージ違いのものを同時に試飲する機会はないので飲む前から興奮していた。わざわざ全て新しく開けたてのワインを飲ませてくれた。後になって思うと僕しかいないのにここまでしてくれたのは流石に申し訳ない。それぞれの違いをはっきりと感じることができて、その年や土地に対して真剣に向き合い自分達ならこの年のブドウをこうしたい!っと言った信念をピュアな仕上がりのワインから感じだ。あれこれやっているとあっという間に時間になってしまった。一日中いたい場所だった。
次のワイナリー ドクターズフラットへの道は全くフラット(平坦)では無かった。電波が入らないほどの山を超えて40分ほどかけて指定の住所に到着。しかしそこに看板も何も無かった。少し丘を登ったところに葡萄畑がありワイナリーの気配だけを感じて、電話をかけて道案内をお願いしたが、難しくて分からなかった。今一度あたりの道をぐるぐる回って、またさっきの畑へ戻り恐る恐る農道を走っていくと小さな家がぽつんと見えた。手を振る方がワインメーカーのスティーブさんだった。
室内はアートがたくさんあり、無機質な建材で建てられシンプルに洗練されたアトリエのような空間だった。そこでひたすら地質や土地の歴史の話をしてくれた。しゃべりが早いアンド知らない単語連発で分からないことだらけで申し訳なかった。日本のお客様の反応やワカヌイでの販売状況を伝えるととても嬉しそうにしてくれた。何年かおきにボトルデザインを変更しており、次回はブラックボトルになるとのこと。デザインがどんどんカッコよくなっていって素晴らしい。夜飲むワインないなら持って行きなとワインを持たせてくれると彼は靴を履き替え颯爽とトラクターに乗りこんで忙しそうに去って行った。
ギブストンバレーのPNを飲んだ直後だとドクターズフラットはかなり濃縮感が高い仕上がりになっていると気がついた。バノックバーンは日当たりによっては力強いPNをつくることができ、その産地個性からセントラルオタゴのサブリージョンの中で唯一G I(地理的表示)になっている。そのわけをここで実感した。
 
【キャリックランチ】
すでに15種類ほど試飲している為若干フラフラしながら次のキャリックに向かった。到着すると目が覚めるほど美しい眺めのレストランへ案内されそこでランチを頂いた。ワカヌイに2月に来たAJさんが空いてる全てのワインを少しずつ試飲させてくれた。ロゼ、リースリング2種、シャルドネ、オレンジワイン、ピノグリ、ピノノワール4種、
食事は正直言って昨日のディナーより美味しかった。イノベーティブな料理がベースとなりキャリックのワインを美味しく飲ませる工夫が素晴らしかった。メインはダックの胸肉にカカオのような香りのソースで合わせたもので初めて飲む自然派ピノ・ノワールとの相性は抜群だった。
外には庭がありその丘の下には湖。その斜面にそって一面にタイムが自生していた。(そのタイムの花の蜂蜜も素晴らしい)たまたま昨日行ったレストランのスタッフが来ており、昨日担当してくるたウエイターがテンション高めに駆け寄ってきて偶然の再会に驚いた。
その後のことはほぼ覚えていない。
気がつくと車内で寝ていてもう日暮れ時だった。
飲み過ぎには気をつけたい。
明日はついにマタカナプロビダンスへ!
おわり
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ニュージーランド9-10日目

ニュージーランド9、10
【オークランドシティ散歩】
NZイースター祭の4連休初日にあたるこの日は大手スーパーさえも休んでいた。旅行者にとってはどこに行っても不便がありそうだったので特に予定は決めずに市内を歩いてぶらぶら散策した。とりあえず近場のフィッシュマーケットに行って、またもやフィシュアンドチップスを買ってみたり、一緒に頼んだフィシュバーガーの中身もこれまたフィシュアンドチップのフィシュと全く同じ仕立てで驚いたり、地元の子供達に混じって公園の遊具で遊んでみたりした。
南半球で1番高いタワーとして知られるオークランドスカイタワーにも行ってみた。麓にスカイシティというがエリアがあり日本のスカイツリーにあるソラマチと同じ趣旨の名前で面白かった。入場口が地下にあることに気づかず少し迷った。入場料は3人で100$ほど。
素晴らしい眺めだった。観光地感満載の雰囲気の中、観光客を全力で楽しんだ。ビクトリアパークの近くのオールプレス本店も見に行って見たが当然のごとく休みだった。そのままポンソンビーストリートまで歩いてからホテルに帰った。
その日の夕暮れを見ながら、明日いよいよ帰国日がやってくることが身に染みた。
フィシュマーケットで買ったグリーンマッセルや謎の巨大アサリ、巨大イカを使ったビアンコのペスカトーレ。ラム100%の生サルシッチャをNZ産のウイキョウと謎の赤いジャガイモと共にローストしたメインを最終日のディナーとした。荷物を軽くする為もありキャリックのリースリングとドクターズフラットのPNを飲み切った。
【最終日】
朝はゆっくりと起きて残りの食材やフルーツを全て食べきり、チェックアウト後Uberを呼んでレンタカーショップに向かった。元々北島でレンタカーを借りる予定は無かったのだが、朝から23時のフライトまでキャリーバックを引きずりながら一日中オークランド市内を歩き回るイメージが湧かなかったので、どうせ20キロ離れた空港に何らかの交通手段でいくのであれば一日レンタカー借りてドライブしてから空港に行けばよいと考えて急遽手配した。
ロトルアに向かったのだが、片道3時間以上かかる距離で最終日の軽いドライブの目的地としてはちょっと遠くに設定し過ぎた。
ロトルアはマオリ文化を体験できる施設が多くあり、自噴する温泉が間近で見れる光景はファンタジーの世界の様で異様に映った。 
ゆっくりと滞在する時間はなく、バーガーをかじりながらオークランド空港にトンボ帰りした。
かくして車での走行距離1,400km、文字数30,000字にも及ぶNZの旅とその記録はゴールテープを切った。
(日本の本州の長さは1,500km)
(原稿用紙75枚分)
【日本へ】
朝6時過ぎ10時間のフライトを終え
日本に降り立ち、季節はずれの暑さと都会の重い空気を感じながら、周囲で聞き慣れた言葉が飛び交っている安心感で満たされた。成田のトイレの便座に座るとその温かさに涙が出そうになった。(NZには温い便座はたぶん存在しない)なんでもない定食屋、その辺のラーメン屋、スシローさえもコスパ良すぎて最高に感じた。
そりゃ皆んな日本にくるよね。
【総括 旅とは】
当たり前かもしれないが旅は初めて連続で成り立っている 初めての土地、初めて会う人、初めて見る景色、初めてみる動物、、これらがずっと連なり続ける。旅先でのその一歩一歩があらゆる初めてへ向かってひたすらに進んでいく。
マタカナに向かうUberの中でこの文を書いている。この瞬間に突き刺さるようにこれを感じたのだ。
繰り返しの日々の中にはそれはそれで良さがある。安心して一歩を踏み出せるし、ある程度予想して構えていられるのでストレスから上手く身をかわせる。
初めて親の元を離れて、、
いつの日だったか、、
見知らぬ土地に少ない荷物を持ってたった1人で降り立ち、右も左も分からぬ生活をはじめた頃を思い出す。
そんな究極にエキサイティングで期待に満ちた、恐怖にもこの上ない喜びにも近いあの感情を再び湧き上がらせる為に大人は再びスーツケースを手にするのかもしれない。 
ありがとうニュージーランド
ありがとう日本 
皆様長々とお付き合い頂きありがとうございました。
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